「品質とヒューマンファクター」を、日科技連出版社より出版しました。

  当研究所所員の共同執筆による「品質とヒューマンファクター」を、2012年11月、日科技連出版㈱より出版しました。

A5版 186ページ 定価2,800円+税
ISBN-10: 4817194480
ISBN-13: 978-4817194480



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  本書の目的は、世の中を埋め尽くしている製品、いや、溢れていると言ってもよい製品が、人間によってつくられながら、 どのようにすれば、人間にとって優しい存在となるか、また「品質」という観点に立てば、 いかに人間との良好な信頼関係を築くことができるか、すなわち人間の特質を見る「ヒューマンファクター」との関連を明らかにすることである。 そのために表題を「品質とヒューマンファクター」とした。

  「品質」については、製品だけではなくサービスも含め、その評価を大きく左右する提供者や使用者など、 これにかかわる人間の面からの多様な視点での考察を行うことが重要であり、それには人間の特性あらわす「ヒューマンファクター」 を理解することが必要となる。

  今や広く社会において安全が文化として最優先で求められる時代となった。本書ではそのヒューマンファクターを軸に、 品質と安全及び安心、品質管理と品質保証、安全文化と品質文化などを考察する。



目次

第1章 序章

        1.1 はじめに
        1.2 本書の概要

第2章 品質と「ヒューマンファクター」

        2.1 ヒューマンファクター
        2.2 人間の進化と脳及び心技体
        2.3 気づきの力(観の目強く、見の目弱く)
        2.4 人間の基本的特性と行動特性
        2.5 人間の情報処理のプロセス

第3章 品質へ大きな影響を与える「ヒューマンエラー」

        4.1 ヒューマンエラーとは
        4.2 エラーはなぜ起きるか
        4.3 組織エラー

第4章 品質向上に寄与する「マネジメント」

        4.1 CRM(Crew Resource Managemnet)
        4.2 TEM(Threat and Error Management)
        4.3 リスクマネジメント
        4.4 スイスチーズモデル

第5章 品質にかかわるトラブルの分析と対策

        5.1 品質トラブル分析の重要性
        5.2 根本原因分析
        5.3 原因分析手法
        5.4 VTA
        5.5 なぜなぜ分析
        5.6 M-SHEL分析と対策

第6章 品質の安全と安心

        6.1 製品安全と製品安心
        6.2 製品の設計における品質対応
        6.3 運用と保守にかかわるヒューマンファクター
        6.4 サービスにおける品質
        6.5 RC、CSR、技術者倫理、ESRと品質

第7章 品質文化

        7.1 文化のとらえ方
        7.2 品質文化の原点
        7.3 品質文化確立の要件

第8章 おわりに

本書の概要

  一般に「品質」とは、ある品物なり、サービスなどが備えている性質である。 ISO 8402-1986(品質管理及び品質保証―定義)では、品質(Quality)とは 「有形あるいは無形の要件を満足する製品やサービスが構成する特徴や要素の総体」と定義している。 さらに、現在ではISO 9000(品質メネジメントシステム)に合わせ、品質とは、「本来備わっている特性の集まりが、 要求事項を満たす程度」とやや抽象的な表現になっている。いずれも「使用目的の満足度」とか「要求事項を満たす程度」のように、 物理量のような固有値ではなく製品やシステムの使用者、評価者の満足度というような、 状況によっては変動する可能性のある相対的な値で評価されている。この点は品質を考える際の難しさを含んでいる。

  このように「品質」は単独ではなく、人間と対になって存在しているとみることができるが、 評価する人間の判断基準は様々な影響を受けやすく、必ずしも常に一定とは限らない。また、 製品やシステムあるいはサービスの品質を具体的に左右する品質保証活動も、それを実施する人間の知識、 能力に大きく依存している。

  したがって、「品質」を考える場合に、人間について触れることは不可欠である。そのため本書では、 以下の章では品質に大きく関与する人間の基本的な特性を取りあげ、順次、品質に影響するヒューマンエラーに関する問題、 品質と安全及び安心の考察、製品の製造及び運用、保守におけるヒューマンファクターの関与、等に触れ、 最後に品質全体的を文化として捉える品質文化に関して考察を行う。

第2章では、品質の維持と向上に大きく関与する人間の特質、思考、行動など、特に心理的な側面である「ヒューマンファクター」 についてその概要を述べる。
特に、人間の行動を支配する脳の行動モデル及びそこからの指令に対する、心理的、生理的行動について概説する。 また、品質や安全に対する気づきの力、総合的な情報処理プロセスについても触れる。

第3章では、人間の特質の中でも、品質へ大きな影響を与える「ヒューマンエラー」について、ヒューマンエラーとはどのようなことを指し、 どうしてこのようなことが日常的に起こるのかを述べる。

第4章では、人間が行動する際に起きがちなヒューマンエラーを避ける工夫とそれらを「マネジメント」する考え方などについて述べる。

第5章は、品質にかかわるトラブルが起きた場合に、なぜこのようなことが発生したか、その対策はどのようにしたら良いかを考える。 なお、分析手法として、理解が容易で応用範囲が広いため、日本ヒューマンファクター研究所が特に提唱している3つの分析法 (VTA、なぜなぜ分析、M-SHEL分析)を中心にその概要を示す。

第6章では、実際の製品やシステムの設計・製造から、流通・利用に至る過程において、 ヒューマンファクターがどのようにかかわっているかを考察する。特に、 人間が直接関与する無形の品質であるサービスについてもヒューマンファクターの考察を行う。

第7章では、品質を維持し、さらにより高めるためには、関与する人間の考え方や体制(文化)が大きな課題であり、 これを「品質文化」として概観する。ここでは、日本人の文化に対するとらえ方、品質文化の原点を考察し、 まとめとしてこの品質文化を形成確立するための要件を述べる。

2012年11月30日 日本ヒューマンファクター研究所